消えゆくものの大切さ
残らないもの、消えゆくものの大切さを感じます。
残らないものを一概に「役に立たなかった、悪しきものだったから」と言えないのが、今の時代ではないかしら、と思います。
良いものであっても、時の流れの方が力が強い場合があります。
お気に入りの素晴らしい技術を持っていらした食まわりのお店やセレクトが粋な小間物屋さんであっても、その流れに逆らえず切ないお別れをしたこともあります。
私も何故か「廃盤」になるお品物を好んでしまう傾向がある様で、手元にあるものも色々と今はもう手に入らない形になっています。
流行を追い求めることはほぼないのですが、昔からファッションでも雑貨でも自分の好きなスタイルがあります。
アニエス.bの七分袖、ボートネックのTシャツは、色・柄違いで何枚か揃えていたお気に入りでした。
定番だと思っていたのですが、姿を消しました。
ハーブを入れているガラスキャニスターは、底が四角いので収納に大変便利。
4年前に私の住まう松本を襲った震度5強の時にも、このガラスキャニスターは一つも割れずにいてくれました。
でも、そのガラスキャニスターも今は「廃盤品」です。
益々、食もファッションも二極化していくだろうこの先、消えゆくものにも価値があることを忘れてはならない、と思います。
そして、改めて手元にある「続きを得られないお品たち」に愛情深くするのです。
そんな思いを持つ私に先日この様なご依頼がありました・・・
「お気に入りのカレー粉が廃盤になってしまって、この味を再現出来ないかしら?」
今はないその方にとっての忘れられないお味。
スパイスですから”香りや色合い”も重要でしょう。
お受けするには、勇気も必要ですし、ハードルが高いことだとは承知でしたが喜んで承りました。
元のカレー粉を少し残して下さっていたので、それをこぼさぬ様大切に保存し、表記内容と香りをじっくり確かめること数日。
奇をてらった個性的なカレー粉ではなかったので、だからこそ難しいですね。
色は余り黄色寄りではないブレンドがお好みでしたので、色からもブレンドレシピを分析したりしました。
ご依頼者は、とても丁寧に物事に向かわれる方ですから、お料理も同様でしょう。
先日の新月に完成したブレンドをお渡ししましたが、その方のお宅に受け入れられる「あのお味」になっていたでしょうか。
消えゆくものにも価値観を見出されていらっしゃる方にお会い出来ると、私も心の中で歓喜の声を上げています。
大切な想いを託して下さり、また貴重な体験をさせていただき有難うございました。
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